公益社団法人和歌山県看護協会

当院では2009年（平成21年）6月に医療安全管理室が設置され、専従の医療安全管理者が配置されました。

医療安全対策委員会をはじめ、各種委員会、各部門と組織横断的に協力、連携しながら安全な医療を提供するために活動を行っています。現在の医療安全管理室は室長（医師）、医療安全管理者（看護師）と感染対策担当（感染管理認定看護師）の3名で活動を行っています。院内には医療安全対策委員会が設置され、各部門にリスクマネージャーが配置されています。

医療安全対策委員会の構成委員8名（医師、薬剤師、放射線技師、看護師）による事例検討会では月毎の報告事例を検討し要因の分析、対策を検討しています。また、全職員を対象とした医療安全に関する研修会を年2回開催していますが、一度の開催では全職員（583名）の参加が困難なため後日、DVD研修会やe-learningによる研修会を開催し全員が受講しやすい環境を工夫しています。「より安全な業務を行うためには」をテーマに取り組んでいますが、全職員が医療安全へ積極的に取り組む組織風土を醸成させることは難しいのが現状です。基本理念である「皆様に親しまれ、信頼される病院をめざします」のために、職員ひとり一人が危険を感じる力「リスク感性」を身につけ、安全で安心な医療が提供できる体制づくりに努めています。

「医療事故調査制度への対応を」

2015年（平成27年）10月から医療事故調査制度が施行されました。“医療法上の医療事故”の判断主体は医療機関の管理者となります。管理者が判断するに当たっては、当該医療事故に関わった医療従事者から十分事情を聴取した上で、組織として判断することが求められています。

判断基準においては

• 医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産か否か？
• 当該死亡又は死産を予期していたか否か？

です。

医療事故調査制度については制度の運用の改善を図る目的で見直しが行われ、平成28年6月24日に省令が改正、通知が発出されました。改正の要点は①死亡及び死産の確実な把握のための体制を確保すること、②医療事故調査等支援団体と共同で協議会を設置することの2点です。

当院では、判断プロセスの正当性確保に全死亡事例を集約し、医療事故か否かを判断する仕組みを構築するために、2016年（平成28年）2月より全死亡退院患者のカルテ監査を開始したところです。監査委員は院内医療安全対策委員より医師2名、看護師4名を選出し2グループに分けて担当しています。また、医療安全管理室長と医療安全管理者は全死亡退院患者のカルテ監査を行います。各グループには隔週の月曜日に前週1週間分の死亡退院症例が院内mailで配信され、監査表に沿って行い医療安全管理室に提出する事になっています。監査結果は医局会や看護部記録委員会、医療安全委員会を通じてフィードバックを医療安全管理室から行うことで日頃からのカルテ記載の質の向上にも取り組んでいます。

医療事故調査制度は、責任の追及ではなく再発防止が目的です。医療をより安全に提供していく狙いがあります。患者・家族と医療従事者の双方にとってよりよい医療につながるようにしていかなければなりません。そのためには、日頃からのインホームド・コンセントの徹底と臨床経過をふまえた死亡リスクの説明、そして説明した内容のカルテ等への確実な記録の徹底に取り組んでいます。